【恋愛工学とは何か】ぼくは愛を証明しようと思う 徹底解説 その8
前回まで
麻衣子の携帯を盗み見し、浮気の事実を問いただすわたなべに対し、怒りをあらわにして部屋を飛び出した麻衣子。途方に暮れるわたなべ。その後、麻衣子からの連絡は・・・
恋愛工学 ぼく愛 徹底考察 その8
麻衣子が出ていってからも、わたなべの元に麻衣子からの連絡はなかった。
その間、わたなべにとってする事といえば仕事しかなかった。
再び永沢圭一と会い、仕事の打ち合わせをする。仕事の方はなかなか順調。
やはり仕事は、女と違って、頑張れば裏切らない。
そんな風に考えながら時が経ち、麻衣子からの連絡が突然来たのはクリスマスの一週間前だった。あの日から2ヶ月近く経過していたのだ。
「しばらく連絡しなくて、ごめん。クリスマスに会いたいな。」
二人は結局12月24日に再びデートする事になった。
12月24日といえば恋人たちの最大イベントデー。めぼしいレストランはどこも予約でいっぱいだ。
それでも麻衣子に会いたい一心で、わたなべは銀座のフレンチレストランを予約する。もちろん、麻衣子にあげる約束をした30万円のバッグも一緒に買って準備しておいた。
そして12月24日当日。
二人はあの日のことは口にせず、クリスマスディナーを楽しむ。
約束した30万円のバッグを麻衣子に渡した時、彼女はとても喜んでくれた。いい感じだ。
わたなべの心の中では、これをきっかけにまた二人の関係を修復しようと考えていた。実はわたなべは事前にホテルも予約しておいたのだ。
また二人で仲良く過ごしたい・・・
ディナーが終わり、その旨を伝えたら麻衣子はこう言った。
「ごめんね。まだ、そういう気分じゃないの」
そう言って、麻衣子は次の約束があるということで帰って行った。
予約したホテルに一人で泊まる事にしたわたなべ。
一人での時間つぶしに見た映画のワンシーンを見て、わたなべはもう一度自分の気持ちを声で伝えようと決心する。
麻衣子に電話をかけても案の定留守番電話に切り替わる。
わたなべは今の自分の気持ちを留守番電話メッセージに録音した。
「今日は久しぶりに会えてすごくうれしかったです。僕はもちろんいまでも麻衣子のことが好きです。大好きです。啓太の結婚式ではじめて麻衣子を見たときに、すぐに好きになりました。それから、いっしょにご飯を食べに行ったり、花火大会に行ったり、楽しいことがいっぱいあったね。これからもずっと、ずっといっしょにいたいです。連絡待ってます」
果たして麻衣子からの返事は来るのだろうか・・・。
恋愛工学生からの視点
浮気をしていたことは謝罪せず、携帯を盗み見た事に対して怒りをあらわにした麻衣子。
論点のすり替えである。
だが、モテなくてセックス不足のわたなべにとって、いま麻衣子を失うことは何よりも避けたい。なぜなら、麻衣子を失えばセックスをさせてくれる女の子がいなくなってしまうからだ。
この時点で、わたなべと麻衣子の関係性ははっきりした。わたなべが下で、麻衣子が上。麻衣子はわたなべがセックス不足のモテない男だという事を理解していた。
こうなると、わたなべのようなモテない男性は後手後手に回らざるを得ない。
向こうからの連絡をただひたすら待つしかない。セックスさせてくれるのを、まるで飼い主からえさを待つ飼い犬のようにじっと物欲しそうな目をして待つしかなくなる。
クリスマスの会いたいと麻衣子からの連絡が来た時もそうだ。2ヶ月も音沙汰なしでいきなりクリスマスデートを打診して来るなんて、なにか魂胆があるに違いないと思いそうなものだが、モテないわたなべはそんな事など考えられず二つ返事でレストランとバッグを用意した。
ちなみに、クリスマスのディナーは雑な料理でも飛ぶように売れる。これは飲食店を経営する私の友人がこっそり教えてくれた残酷な真実だ。
普段お店で出す料理よりも数段質が下がったものを出しても、恋人たちが喜んで金を払う。
モテる男はクリスマスは家で手料理と高級で美味しいお酒を用意して過ごした方が利口のようだ。
話を戻そう。
ホテルで一緒に過ごそうと打診するもあっさり断られる。麻衣子の本心はわたなべとの時間ではなく、30万円のバッグだったのだ。
それでもわたなべの気持ちもわからないでもない。可愛い彼女と楽しい時間を過ごそうと一生懸命準備することは何も悪いことではないのだ。
ただ、わたなべ自身がセックス不足のモテない男だという事、そしてあきひろのようなわたなべよりももっといい男が麻衣子のハートを奪っただけなのだ。
極め付けは、映画に触発された音声メッセージ。
どんな内容であっても、モテない男性の音声メッセージは女性には響かない。
むしろ、そういった行為をした事自体が気持ち悪がられるのだ。
踏んだり蹴ったりのわたなべが、恋愛工学によってどのように変わっていくのか今後に期待したいところである。
次回に続く